【テレビ屋】なかそね則のイタリア通信

方程式【もしかして(日本+イタリ ア)÷2=理想郷?】の解読法を探しています。

Brexit

さようならBexit、コンニチワお一人さま英国


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英国はBrexitでEUから去ってもむろん孤独ではない。当のEUをはじめとして世界には英国を友人と認める国々がいくらでもある。だがここではEUの枠を抜け出した英国を、EUとの対比で敢えて「お一人さま」と呼んでみた。

Brexitを最大の争点にした総選挙で、離脱強行派のボリス・ジョンソン首相率いる保守党が圧勝した。長い間のBrexit騒動はこれで終わり 、英国はEU枠外に去ることがほぼ確定した。

EUを離れても、もちろん英国は、政治・経済・社会・文化の成熟した世界一の民主主義大国として、あらゆる面でうまくやっていくだろう。

離脱後しばらくの間は、通商に関するEUとの厳しい交渉や、混乱や不利益や停滞も必ずあるだろうが、それらは英国の自主独立を妨げない。

英国の自主独立の精神は、かつての大英帝国の夢の残滓がからみついた驕り、としばしばEU域内の人々の目に映ってしまうことがある。

そこには真実のかけらがある。だが、過去の栄光にしがみつく気分がもたらす常在の慢心はさて置き、英国民の我が道を行くという自恃の精神は本物でありすばらしい。

その英国民の選択は尊重されるべきものだが、総選挙をBrexitへと先導したジョンソン首相の求心力は長くは続かないと思う。

しかしながら僕は、過去にトランプ大統領の誕生を非現実的と見誤り、彼が大統領に就任してからは、不人気で無能な大統領になると予測してスベリまくった。

その流れで今回は、トランプ大統領と親和的な政治心情を持つジョンソン首相に対する批判心から、バイアスのかかった見方になっている可能性がある。

そこでここでは、「総選挙前までのジョンソン首相の在り方のままなら、彼の求心力は長くはもたないと考えるのが常識的だろうが」と言い直しておきたい。

EU域内の欧州大陸側にいると、英国やアイルランドといった島国の様子が客観的に見えてくる。それは日本やアメリカほかの国々が客観的に見える状況と同じで愉快だ。

また同じ大陸内とはいえ、EU各国をはじめとする欧州の国々も客体的 に眺めることができる。同時に自らが住むイタリアという国自体も、「日本人という外国人」の目で中立的に見ることができる、という気がしている。

そんな視点で見る今後の英国には、力強さとともに不安で心もとない側面もある、と強く思う。その最たるものは連合王国としてのイギリスの結束の行く末だ。

イギリスは周知のようにイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド から成る連合王国だが、Brexitによって連合の堅実性が怪しくなってきた。

特にスコットランドは、かねてから独立志向が強いところにもってきて、住民の多くがEU残留を求めているから、今後は独立へ向けての運動が活発化する可能性がある。

また北アイルランドも、地続きで兄弟国のアイルランドと、いわば宗主国であるイングランドとの間で揺れ動き、不安定な政情に陥るかもしれない。

ジョンソン首相には連合王国をまとめて行くカリスマ性と求心力はない。彼はむしろ分断を煽ることで政治力を発揮する独断専行型の政治家だ。

Brexitのように2分化された民意が正面からぶつかる政治状況では、独断専行が図に当たれば今回の総選挙のように大きな勝ちを収めることができる。

つまり一方をけしかけて、さらに分断を鼓舞して勝ち馬に乗るのだ。その手法は融和団結とは真逆のコンセプトだ。彼が今後、連合王国を束ねることができると見るのは難しい。

僕は繰り返し書いているように英国のファンである。民主主義大国の英国は、連合王国として常に結束して、世界に民主主義の良さと強さを明示し続けてほしいと願ってきた。

その意味でスコットランドの独立にも僕は反対を唱えてきた。スコットランドが独立すれば英国が弱くなり、それよりもさらに惰弱な小国が生まれるに過ぎない。それは世界の民主主義にとってはネガティブな出来事だ。

英国はEUの中に留まって、EUの「民主主義力」を支え同一化して共に繁栄してほしい、と常々願ってきた。だがその願いは今回の総選挙で粉々に破壊された。

そうなってしまった今、僕はスコットランドの独立をむしろ期待する。なぜならスコットランドは英国から独立することでEUに留まる、あるいは参加することができる。それはEUの強化につながる。

僕はEU外に去る、強くて尊重できる、だが愚かな国でもある英国よりも、EUの結束と拡大と、従って政治力の増大にも資するスコットランドの独立を支持する。

英国の繁栄を願う気持ちに変わりはないが、世界の民主主義にとっては、残念ながら、英国よりもEUの結束と強化の方がはるかに重要だと考えるからだ。


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英総選挙、ドンデン返しの読み方

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選挙結果を予測するのは、(立候補した)当事者か投資家でもない限り無意味である。なぜなら、選挙はフタをあけてみるまで分からない、という古すぎると言うさえばかばかしいほどの箴言が常に正しいからである。投資家だけはボロ儲けを狙って、魑魅魍魎が横行する選挙後の金融投機市場に資金を注ぎ込もうとするから死に物狂いで結果予測を試みる。

しかし、机上論者の経済学者らが、現実の市場経済の動向や実体を「理路整然と」間違うことが多いように、投資家たちも選挙という魔物の正体に惑わされてしばしば大損をこうむる。要するに選挙とは、結果を測ることが至難の、だが結果を予測することが選挙自体よりも得てして魅力的な、人間の不思議な発明の一つなのである。

僕はそこかしこで表白しているように、Brexitの行方を十中八九決定するであろうイギリスの総選挙の様子を真剣に見守っている「反Brexit主義者で英国ファン」の男である。Brexitを巡る自身の政治的立ち位置については前回エントリーでも既に述べた。

世論調査によれば、Brexitの実行、というよりも「強行」を叫ぶジョンソン首相率いる保守党が、最大野党の労働党を10%前後リードしていて、もはや選挙戦の勝敗は決したという状況である。僕はこの直前記事ではそのことを踏まえて、投票日までに情勢が劇的に変わらなければ 、英国は離脱期限である1月31日さえ待たずにEUから離脱する可能性もある、と書いた。

白状すれば実はそれは、強い反Brexit 主義者である僕の願いとゲンかつぎに基づく表現だった。つまり、Brexitはもはや成った、と信じる振りで書くほうが逆の結果をもたらす、と姑息に考えたのである。だがそれはあまりにも子供じみた願いだと気づいた。そこで選挙結果が出る前に、下手な評者 としての少しの論理的思い、また惑いなどを表明しておくことにした。

Brexit強行派のジョンソン首相率いる保守党の優位は変わらず、投票2日前の2月10日現在、もはや勝敗の行方ではなく保守党がどれくらいの差で勝利するかが焦点、とさえ考えられている。大勝した場合は問題なくBrexitに向かい、僅差での勝利の場合のみBrexit見直し論が沸き起こる可能性がある、というのが世論調査に基づく一般的な見方である。

ところがその状況は実際には落とし穴である可能性もあるのだ。2017年、当時のテリーザ・メイ首相はBrexit論争の膠着を打開しようとして、世論調査が伝える高い保守党支持率を頼りに解散総選挙に打って出た。ところが結果は惨敗。彼女は失脚と形容しても過言ではない形で権力の座から去った。

彼女の前にはデヴィッド・キャメロン首相が、やはり世論調査での高い支持率に裏切られる格好で、Brexitの是非を問う国民投票を敢えて実施し敗北。政権の座を追われた。いや、実のところは無責任に政権の座を投げ出した。

キャメロン元首相の行為は、2016年のイタリアのマテオ・レンツィ元首相の思い上がり国民投票実施や石原慎太郎元東京都知事の尖閣諸島購入計画、あるいは仲井眞弘多元沖縄県知事の辺野古移転容認策などと同様に、後世まで語り継がれ指弾され続けられるべき事案である。

英国の各世論調査は近年、選挙や国民投票の予測で失敗を繰り返し全く信頼に値しない、という見方もある。だがその傾向はイギリスだけにとどまらない。世論調査は2016年、米大統領選挙でのトランプ氏勝利についても、大失策を演じたのは記憶に新しい。

世界中で同様のことが起きているが、民主主義大国である英国の場合は特に、有権者の動向を予測するのがきわめて難しくなっている。今回の総選挙でもほぼ全ての世論調査が保守党の勝利を見込んでいるものの、実は有権者の半数が投票日まで誰に票を入れるかを決めていない可能性があり、誰がどの程度の差で勝利するかは分からない。

英国では投資家などを中心とする人々が、世論調査の不手際をおそれて、人工知能による分析やWEBによる選挙民のムード分析、あるいは既存のブックメーカーの分析予想法などを駆使して選挙結果を推測しようとする動きまである。かつては選挙結果を予想する時に参考になったのは、85%までが世論調査の数字だったが、現在では30%以下だとさえ言われる。

つまり、ジョンソン首相と保守党の勝利を一様に予測している各種世論調査の結果は間違っている可能性がある。首相と保守党の敗北とまではいかなくとも、僅差での勝利にとどまるケースも考えられるのである。つまり僕のポジショントークではなく、選挙後にBrexit見直し論が起こり、ひいてはBrexitが反故になることもあり得るのだ。

Brexitはこの直前の論考で述べた通り、大局的に見て世界のためにならないと思うが、地域的に見ても、特にジョンソン首相が政権を維持し続けるようなら、英国のために全く良くないと思う。彼は権力の亡者だとされる。自らが首相になりたい一心でBrexitを推進しているという批判もある。

しかしながら、政治家である以上は、政界の最高の地位である総理大臣を目指すのは当たり前だと僕は思う。そうではない政治家なんてどうせたいしたことはない。それは政権掌握を目指さない政党がフェイクであるのと同じ欺瞞だ。

ジョンソン首相の政治家としての野心は良しとするべきだと思う。しかし彼は人間的に信用できない男、という評価が敵味方にかかわりなくつきまとっているとされる。政治家としては勿論、ジャーナリストだった頃も同じである。この悪評のほうがよっぽど深刻ではないか。

そこを捉えて、BBCの著名なジャーナリストが「信頼」をテーマにジョンソン首相への公開質問状をテレビで読み上げた。そこにはジョンソン首相の嘘で塗り固められた政治主張や言動や行状がこれでもか、とばかりに語られている。

BBCは公開質問状をこう説明している。「これはわれわれが視聴者の代わりに、政権を握るかもしれない人を詰問し、責任を問うものです。それが民主主義です」」と。その説明通り詰問状は、ジョンション首相が所属する保守党以外の全ての党の党首にも投げかけられ回答を得た。ところがジョンソン首相だけはそれに答えずに逃げ回っている。

ジョンソン首相は、Brexitを推進した「Brexit党」党首のナイジェルファラージ氏と同じトランプ主義者である。トランプ主義者とは反移民、人種差別、宗教差別などを旗印にして、「差別や憎しみや不寛容や偏見を隠さずに、汚い言葉を使って口に出しても構わない」と考え、そのように行動する人々ことである。

ジョンソン氏は従って、誇り高き民主主義大国・英国の首相にはふさわしくない、と僕は思う。Brexitが帳消しになればジョンソン氏の首相職も同じ道をたどるだろう。その意味でもやはり僕は、英国の総選挙の結果がサプライズになることを願わずにはいられないのである。



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