イングランドサッカーのゲーム運びの特徴は、直線的な動き、長い高い飛行パス、スポーツ一辺倒で遊び心がゼロのゲーム展開、予測しやすいアクションつまり創造性に欠ける陳腐な戦法、そしてまさにそれ故に硬直し竦んでしまう悲しいプシュケー、といったところだ。
そんなイングランドは、今回欧州選手権のオランダとの準決勝で、相手陣内のペナルティエリア外でひんぱんに横に展開する戦法も見せた。
両ウイングにはパスが通りやすい。なぜならそこはゴールエリアから遠いため、相手守備陣はしゃかりきになって防御の壁を固めていない。
イングランドはそこからセンタリング、つまり相手守備陣の頭越しにボールをセンター(ゴール前)に飛ばし送って、主にヘディングでゴールを狙う試合運びである。
パスの通り難いゴール前のエリアを避けるのは、横からの攻撃を仕掛けるためだが、それは裏返せば、相手が厳重に防御を固めている中央部を突破する技術がないことの証でもある。
サッカーはゲームの9割以上が足で成されるスポーツだ。ヘディングはその補佐のためにある。ヘディングシュートも然り。
だがヘディングシュートは、キックに比べて威力が脆弱でスピードも遅くかつ不正確。それは重要な武器だが、できれば足を使っての中央突破攻撃が望ましいのだ。
また、イングランドはサイドから逆サイドへのパスもひんぱんに行った。それはゲームの流れを変える戦術のように見られることも多いが、実はそれほどのプレーではない。
長いボールで安易にパスをつなぐだけの外道な策術であるばかりではなく、そこからゴール方向に向けて新たに布陣を立て直さなければならないため、ムダな2重仕事に終わる。非創造的な動きなのである。
イングランドは2大会連続で決勝に進出した。史上初の快挙だが、優勝できるかどうかはむろん分からない。僕は8分-2分でスペインの勝ちを予想する。
もしもイングランドが優勝するなら、それは彼らがついに欧州と南米の強豪国の創造性を学んだ結果、と考えたい。だが、残念ながら現実は違う。
優勝は2大会連続で決勝に進出した結果の、❛下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる❜を地で行くまぐれ当たりに過ぎないだろう。
準決勝までのイングランドの戦いぶりから導き出した、それが僕の結論である。
イングランドは依然として、サッカーが「遊びと化かし合いがふんだんに詰めこまれたゲーム」であり、ただ「ひたすらのスポーツ」ではない、ということを理解していないように見える。
イングランドは十中八九スペインに負けるだろうが、運よく勝ちを収めた場合は、そこから再び60年も70年も、もしかするともっと長く勝てない時間がやってくるのではないか。
むろん彼らが退屈な❝イングランドメンタリティー❞と戦術を捨てて、遊戯心満載の「ラテンスタイル」のサッカーに変貌できる日が来れば、その限りではないけれど。
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