2021年11月6日土曜日、秋晴れの菜園で仕事中に雉が迷い込んだ。
菜園には小鳥をはじめ多くの鳥がやってくるが、巨大な雉の姿は圧巻だった。
呆然と、しかしワクワクしながらスマホを向けて訪問者の一挙手一投足を追いかけた。
雉は冬枯れの、だがまだ緑も見える、コの字形の僕の菜園の中を行きつ戻りつして動き回る。日差しが強くて僕はしばしば珍客の姿を見失った。
鳥はまるで勝手知ったるかのように菜園を縦横に動き回り、野菜の枯れ色に擬態したり、隠れたり、紛れ込んだりして僕の目をくらました。
菜園は中世風の高い壁を隔てて広いぶどう園につながっている。
ぶどう園は有機栽培である。有機栽培なので昆虫などの生き物が増え、それを狙う動物も目立つようになった。
ぶどう園にもたくさんの鳥がやってくる。それを追うらしい鷹も上空を舞う。夕刻と早朝には小型のフクロウの姿も目撃できる。
ぶどう園にはネズミなども生息していると容易に想像できる。
ぶどう園の隣の僕の菜園にも多くの命が湧く。菜園も有機栽培なので虫も雑草も思いきりはびこっている。
ヘビもハリネズミもいる。石壁の隙間や2箇所の腐葉土場の周囲、また夏は野菜とともに生い茂る雑草の中に紛れ込んでいたりする。小さなトカゲもたくさん遊び騒ぐ。
ヘビは毒ヘビのVipera(鎖蛇)ではないことが分かっているので放っておくが、出遭うのはぞっとしない。
向こうもそれは同じらしい。ここ数年は姿を見ないが、脱皮した残りの皮が壁や野菜の茎などにひっかかっていて、ギョッとさせられる。
ヘビは僕と遭遇する一匹か、命をつないだ固体が、今日もその辺に隠れているに違いない。
雉は菜園を行き来しつつ、しきりに腐葉土周りにも立ち止まった。腐葉土の中にはカブトムシの幼虫に似た巨大なジムシが多く湧いている。それを食べるのかもしれない。
雉にとっては隣接する広いぶどう園と僕の菜園はひとつながりの餌場なのだろう。ぶどう園に寄ったついでに菜園も覗いてみた、というところか。
あるいはこうも考えられる。
イタリアはいま狩猟の季節の真っ盛りだ。住宅地に近い山野や畑でも狩が行われていて、パンパンという銃声が絶えない。
雉はもしかすると銃弾を避けて飛来したのかもしれない。それならずっと僕の菜園で遊べばいいが、雉はきっと僕の気持ちも状況も分からないだろう。
でも実は分かっていて、明日も明後日もずっと訪ねてきてくれるのなら、菜園での僕の楽しみがまた増えるのだけれど。